鍵のトラブルで現場に駆けつける際、私たち鍵師がまず最初に行うのは、その車がイモビライザー搭載車かどうかを瞬時に判断することです。これによって、作業の手順も使用する機材も全く変わってくるからです。プロの視点から言えば、判断材料は多岐にわたりますが、まず第一に確認するのは車両の年式と型式です。しかし、これらはあくまで統計的なデータに過ぎません。現場で最も頼りにするのは、鍵のブレード部分に刻まれた小さな刻印です。メーカーごとに固有のルールがあり、特定のアルファベットや数字、あるいは点のような印が、その鍵の中にトランスポンダーチップが封入されていることを無言で伝えてくれます。これらは非常に小さく、意識して見なければただの傷に見えることもありますが、私たちにとっては重要な情報源です。 次に、メーターパネルの構成を見ます。エンジンを切った状態で、鍵を抜いてもなお点滅を繰り返す赤いランプ。これはセキュリティインジケーターと呼ばれ、イモビライザーと密接に連動しています。ランプの形が車の形の中に鍵が描かれているものだったり、単なる赤い丸だったりとデザインは様々ですが、その役割は一貫しています。また、ドアを開けた際に鳴る警告音のパターンや、液晶ディスプレイに表示されるメッセージからも判断できます。最近の車であれば、鍵を車内に置き忘れていますといった通知が出るだけで、それがスマートキー、つまりイモビライザー搭載車であることを示しています。逆に、こうした電子的な反応が一切なく、鍵穴周辺に照明すらないような簡素な造りであれば、非搭載の可能性が高いと判断します。 さらに、鍵穴の形状自体もヒントになります。イモビライザーが普及した時期と重なるように、鍵の溝が表面ではなくサイドに彫られた内溝タイプの鍵が増えました。このタイプの鍵はピッキングに強く、セットで電子認証も行われていることが多いため、一つの目安になります。私たちはこれらの情報を瞬時に組み合わせ、最適な解錠・作成プランを立てます。お客様の中には、自分の車がセキュリティ付きであることを知らず、合鍵の値段に驚かれる方も多いですが、それだけ高い技術で守られているということでもあります。鍵師という仕事は、こうした目に見えない守りの技術と日々向き合い、解き明かすことの連続なのです。