多くのセダンタイプの車、特に少し前の年式のモデルでは、運転席の足元にあるレバーを引くと、物理的なワイヤーが引っ張られてトランクのロックが解除されるという、機械的な仕組みが採用されています。このワイヤー式のトランクが開かなくなった場合、電気系統のトラブルとはまた違った、アナログな原因が潜んでいることがほとんどです。ワイヤー式のトランクが開かなくなる最も多い原因は、「ワイヤーの伸び、あるいは断線」です。ワイヤーは金属製ですが、長年にわたって何度も引っ張られることで、少しずつ伸びてしまいます。ワイヤーが伸びると、レバーを引いても、ロックを解除するために必要な距離だけワイヤーを引っ張ることができなくなり、結果としてトランクが開かなくなります。さらに劣化が進行すると、ワイヤーが途中で切れてしまう「断線」という状態に至ります。こうなると、レバーを引いても全く手応えがなく、スカスカした感触になります。この場合の対処法は、基本的にはワイヤーの交換しかありません。ディーラーや修理工場に依頼し、新しいワイヤーに取り替えてもらう必要があります。費用は、部品代と工賃を合わせて一万円から三万円程度が相場です。次に考えられるのが、トランクのロック機構(ラッチ)自体の「固着や故障」です。ロック部分がサビついたり、ゴミが詰まったりして、動きが非常に悪くなっていると、ワイヤーで引っ張る力だけではロックを解除できなくなります。この場合は、後部座席からトランク内部にアクセスし、ロック部分に潤滑剤をスプレーしたり、清掃したりすることで、動きが改善することがあります。また、忘れてはならないのが、多くのセダンに備わっている「トランクリッドオープナーキャンセル機能」の存在です。これは、グローブボックスの中や、トランクのロック機構の近くに、小さなキャンセルレバーや鍵穴が付いており、これを操作することで、車内のレバーを引いてもトランクが開かないようにする、セキュリティ機能です。何かの拍子にこの機能がオンになっていないか、一度確認してみてください。ワイヤー式のトラブルは、構造がシンプルな分、原因も特定しやすいのが特徴です。レバーの手応えや、ロック部分の状態をよく観察することが、解決への近道となります。
セダンのトランクが開かない!ワイヤー式のトラブル