防犯性の高さから、近年多くの住宅で標準装備となっているディンプルキー。表面に多数の小さなくぼみがあるのが特徴ですが、このタイプの鍵の合鍵を作ろうとすると、一般的なギザギザの鍵のように「5分で完了」とはいきません。専門の鍵屋に依頼しても、一本あたり「15分から30分程度」、場合によってはそれ以上かかることも珍しくありません。なぜ、ディンプルキーの合鍵作成には、これほど時間がかかるのでしょうか。その理由は、この鍵が持つ「高度な防犯性」と、それを再現するための「技術的なハードルの高さ」にあります。時間がかかる主な理由は三つです。第一に、「専用の高精度なキーマシンが必要だから」です。ディンプルキーの複雑なくぼみは、単に上下だけでなく、左右、時には斜め方向にも、ミクロン単位の精度で掘られています。この三次元的な形状を正確にコピーするためには、コンピュータで制御された、非常に高価で精密な専用のキーマシンが不可欠です。この機械のセッティングや操作には、やはり時間がかかります。第二に、「作業に高い技術と慎重さが求められるから」です。機械を操作する技術者にも、ディンプルキーの複雑な構造に関する深い知識と、精密機械を正確に扱うスキルが求められます。少しのズレが、鍵として機能しない「失敗作」につながるため、一本一本、慎重に、そして正確に作業を進める必要があるのです。そして第三に、「対応できる店舗が限られているから」です。前述のような高価な専用機械を導入しているのは、主に専門の鍵屋に限られます。そのため、ホームセンターなどでは「作製不可」と断られてしまい、専門の店舗を探して依頼するという手間と時間も必要になります。ディンプルキーの合鍵作成に時間がかかるのは、その高いセキュリティ性能を、寸分違わず再現するための、いわば「品質保証の時間」なのです。
ディンプルキーの合鍵作成に時間がかかる理由とは?