「内鍵(うちかぎ)」という言葉を聞いた時、皆さんはどのような鍵を思い浮かべるでしょうか。一般的に、内鍵とは、部屋の内側からのみ施錠・解錠ができる簡易的な錠前の総称として使われます。その主な目的は、外部からの侵入を防ぐ「防犯」というよりも、室内における「プライバシーの確保」です。家族間であっても、書斎や寝室、トイレといった空間では、一人の時間を確保したり、見られたくないものを保護したりする必要があります。内鍵は、そうした個人的な空間を守るための、最も身近な装置なのです。内鍵には、いくつかの代表的な種類があります。まず、昔ながらの住宅でよく見られるのが、ドアの框(かまち)に直接取り付ける「捻締(ねじしまり)」や「掛金(かけがね)」です。金属の棒を回転させたり、掛け金を穴に通したりする、非常にシンプルな構造で、後付けも容易です。次に、ドアノブと一体化しているタイプも広く普及しています。ドアノブの中心に押しボタンがあり、それを押すことで外側のノブが固定される「円筒錠」や、室内側のノブの付け根にあるつまみ(サムターン)を回して施錠する「チューブラ錠」などがこれにあたります。これらは、トイレや子ども部屋、寝室などで最も一般的に見られる内鍵と言えるでしょう。また、ホテルの客室ドアなどでよく見かける「ドアガード」も、内鍵の一種と考えることができます。チェーンやU字型のアームをかけることで、ドアを少ししか開けられないようにし、訪問者を安全に確認するための役割を果たします。これらの内鍵に共通しているのは、外側から鍵を使って開けることが想定されていない、という点です。そのため、防犯性能は決して高くありません。あくまで、内部のプライバシーを守るための、簡易的な仕切りとして機能するものです。この基本的な役割と限界を理解しておくことが、内鍵と正しく付き合っていくための第一歩となります。
内鍵とは?その種類と基本的な役割